約10年思い続けてきた念願の海きららへ(2)
前回の長崎に行くきっかけの話に続き、今回は海きららに行く前日、九十九島を訪れた旅の1日目の話。
ひとりでやってきた長崎県。
本当は誰かと行きたかったが、予定が合わず一人できた。
しかし今思うとなかなかハードで、今回のような個人的に確固たる目的がある場合は一人で来て大正解だったかもしれない。
というのも長崎市と佐世保市の距離は道路上では約80キロもあり、長崎空港はでこぼこした地形故どちらの市からもそこそこ遠く、移動時間が長いのである。
これを知らず、佐世保にしか滞在しないのは勿体ないので長崎市にも足を伸ばそうと思ったがために一泊二日ではやや辛い行程になった。
1日目は午後の飛行機しか取れなかったので、長崎空港に着いたのは15時。
ここからバスに乗り、佐世保駅に着いたのが16時10分。もう夕方である…。
佐世保駅周辺はグルメスポット以外夕方から行けそうなところはない。
折しもその日は快晴で、旅の有力行先候補になっていた九十九島の日の入りを見に行くには最高の天気。
九十九島行きの時間を調べると、16時15分のバスに乗ればギリギリ日の入り前に九十九島の展望台に着く。
それを逃すともうあとはない。
バス発車まであと五分しかないが、一か八かで行ってみよう!ということで猛ダッシュでバス停へ!
しかし信号待ちが長く、乗ろうとする目前でバスが出発してしまった…。
ああ残念ついてない…今日はどこにもいけないな…と諦めた次の瞬間、左から地元民のおじいさんが走ってきて、なんと手を上げてバスを止めてくれた!
おかげさまで幸運にも、おじいさんに続いて駆け込み、展望台行きのバスに乗れたのである。
夕日に照らされた、佐世保造船所の巨大なクレーンを脇に見ながら海沿いの坂を登っていく。
バスに揺られること20分、展望台最寄りの停留所、「動植物園前」に着く。
動植物園とは「森きらら」のことのようだが、既に閉館が迫っているので人影はほとんど見当たらない。
ここから急な坂道をスーツケース片手に登っていく。
Googleマップによれば、展望台まで徒歩で20分はかかるようであった。
そこで以前、秋田県を旅した時、入道崎という灯台を訪れたあとにどうしても交通手段がないので、仕方なく灯台から旅館まで40分ほど徒歩で歩いた際の記憶が蘇った。
そのときはとにかく民家が少ない、人もいない、車もそこまで通らない、時々電波すら入らず地図も見られないという状況の中で鬱蒼とした木々の間を歩き、そこそこ怖い思いをしたのである。
あのときも美しい海沿いの道だった。
さらに今回は夕方であるので、気をつけねばと思いおそるおそる歩きはじめたのだが、実際歩いてみると意外にも民家が多いし、人もちらほら見かける。
さらに歩きながら展望台を調べると、防犯のために夕方から展望台付近の道をライトアップしてくれているようだ。
10分ほどであっという間に展望台の駐車場に着いた。
道中ほんの数百メートル薄暗い林があるだけで、ほとんど杞憂に終わり、駐車場にも車が何台が止まっており一安心である。
駐車場からは整備された階段を登っていく。
あまりに周りが静かなので、住民への遠慮もありスーツケースをガラガラと引かずにかかえてやってきていた。
だが階段を登っているうちにいい加減腕に疲労が溜まり、限界になってきた。
周りの景色は木々に囲まれて殆どみえないのだが、時々間から海と、うっすら浮かぶ島が見える。
期待が高まり、疲労感とは逆に歩みが早くなっていく。
ついに1番上までたどり着き、最後の階段と木々のトンネルをくぐり抜け、開かれた場所に出た。
思わず、息を呑んでしまった。
そこには、今まで見たことのない景色が広がっていた。
穏やかな海、数えきれないほど無数に浮かぶ島々、眼下の港町から聞こえる豆腐売りの笛の音、美しい夕陽を受けて水面に輝く光の道…。
10時に家を出て、ノンストップでここまでやってきた。
なかなか長い道のりであったが、これを見ただけでもう、長崎に来た甲斐があると思った。
右下の湾には、海きららの遊覧船らしき船も見えた。
明日はあそこへ行くんだ…
そう思いつつ、美しい日の入りを30分ほど堪能。
日が沈む瞬間は肉眼で見ても眩しくないこと、本当に太陽は丸いのだということを初めてこの目で知った。
こんな美しい夕陽の街に住んでいる人がいるなんて。
太陽が水平線の下に隠れたあとは、急いで帰路へ着く。
早く帰らないとバスを逃すし、真っ暗になった林を歩かなければいけなくなる。
ところがこれまたバスに続いて幸運なことが起こった。
展望台で夕陽を待つ間少しだけ雑談した、東京からの親切なおじいさんとその息子が車に乗せてくれて、ホテルまで送ってくれたのである。
帰り道が不安な気持ちを感じ取ってくれたのかもしれない。ありがたい気持ちでいっぱいである…。
ホテルにチェックインし、スーツケースを置いてほっと一息。
ワシントンホテル佐世保はきれいで、広さもちょうどいい。
もう19時を過ぎていたので夕飯を探しに外へ。
外食しようと思ったものの、チェロの演奏を店内でしているイタリアンや居酒屋など、ステキな店はあってもやはり1人は入りにくい。 最終的に佐世保駅の駅前のレストランで佐世保バーガーをテイクアウトして落ち着いた。
勝手がわからなかったものの、店員のおばさんたちは大変優しくしてくれた。
コンビニでハイボールを買い、ホテルの部屋で人目を気にせずゆったりと堪能。
外食は叶わなかったが、今日は疲れたしこんなものだろう。
1人回転寿司や1人水族館なんかは私にとってハードルでもなんでもないのに、1人居酒屋はどうも苦手だ。
むしろ佐世保バーガーというテイクアウトできるご当地グルメがあって良かった。
お酒は弱いので2本飲んでほろ酔いに。
明日への期待に胸を膨らませながらその日は眠りについた。
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